「もう、目を開けていいよ。」 男の声がする。 黒はゆっくり目を開けた。 目の前にいた、男はすでにいない。 そこには何の痕跡も残ってなかった。 黒は足元に目を落とす。 ずっと見ていた、黒い足。 歩き疲れて、ぼろぼろになった自分の黒い足。 恨んだ。 嫌いだった、自分の黒い足。 それが今は反対なんだ。 日は昇って、辺りは明るくなっていた。 黒はまた歩き始める。 歩き続けた先には、見下ろす、大きな街が広がっていた。 .