「へ、ぇ。ま、言ってることは分かったけど。どうして黒だと捨てられるんでぃ?」


「…よくわかんない。」




「「………。」」


二人の間に無言の時間が流れる。


しばらくして雪が口を開いた。




「黒か白かなんて気にするこたぁねぇですぜ。俺だってそうでぃ。自分らしくが一番でさぁ。」


「自分らしく…?」




雪はぽんとその手で黒の肩を軽く押す。




「黒、いいじゃねぇですかぃ。何色にも染まらず、ひたすら自分の道を歩く。」


うんうん、と雪は自分の言葉に満足して頷く。




「自分の道…。」


「自分の道でさぁ。他なんか気にするこたぁないですぜ。猫はそうゆう生き物でさぁ。」




雪が、今度は強くその黒の肩を押した。




「さぁ行きなせぇ。自分の道。探してるものがあるんだろぃ?」


雪が肉球を黒の鼻に押し付ける。




「うん。」


黒は返事をして、くるっと雪に背を見せると、走りだした。




勇気。貰った。




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