『みんな、この人が俺の大事な人』

"大事な人"

こんなふうに人を紹介したのは初めてだ

すらっとでた言葉に母さんは優しく微笑んだ

軽く自己紹介を終えて椅子に座る

『俺、この人と結婚する』

いきなりの言葉に家族もこの子も驚く

でも話を切り出さないと沈黙が続くだけだ

「....本気なんだな」

父さんが微笑んだ気がした

「俺、反対」

「私もよ」

「僕もー」

母さんはなにも言わない

こうなることは分かっていたがこの子はそうじゃない

大丈夫だろうか

隣を見て、つい嬉しくなってしまう

落ち込んでるわけでも困惑しているわけでもない

ただじっとみんなの言葉を受けとめていたからだ

この子は俺の家族をきっと大事に思ってくれている

不思議とそう思った

「君は何人家族かな??」

父さんの唐突な問いかけ

「母と兄と弟の4人です」

問いかけの意図はこの子にはわからない