嬉しくて仕方がない俺に父さんが告げた
「この人と一緒になると言うのなら会社は辞めなさい」
「は??」
「お前がいるのは俺の会社だ」
「ちょっと、あなた」
母さんも弟も俺も姉貴までも
父さんの言っている意味が分からなかった
それは結婚に反対ということなのだろうか
「それは私がふさわしくないということでしょうか」
問いかけても誰も返事をしない
父さんと兄貴が俺の顔を見る
俺の答えをまっているのか..
『....分かった』
「分かったじゃないわよ!」
「そうだよ、お兄ちゃん!」
俺にはこの子が一番だから
「俺は手をまわすぞ」
兄貴にはそれだけの権力がある
父さんの会社を継ぐためにそれなりの地位にいるのだから
手をまわすということは大手の会社では働けないということ
結婚するには会社を辞めないといけない
けど辞めてしまえばこの子を養うことができなくなる
大手の会社じゃなくても働けるならいいかもしれない
けど子供が産まれたらお金がかかる
その前に愛する人ひとりまともに養える自信はない
2つの選択肢に追いつめられる俺にこの子は問いかける
「私のこと、好きですか??」
じっと俺の目を見つめる
意味がわからないと思うのは俺だけじゃないだろう
なぜ今、そんなことを聞くのか
呆然とする俺に再び問いかける
「私のこと、好きですか??」
この子は真面目に聞いているんだ
真っ直ぐに俺だけを見ている
『愛してるよ』
ひまわりみたいな笑顔が
ちょっとした仕草が
その声が
周りを大事に思うその心が
俺を真っ直ぐ見つめるその目が
俺を愛してくれるこの子のすべてが愛しい


