「それで怒った彼は、人前なのに私をぶったの。いつもは優しい彼だけど、たまにそうやって私を叩いた。」 私が何かを言おうとすると、麻伊はそれを制して続けた。 「その時に偶然通りかかったのが梨美、あなたなの。」 「えっ!?…映画館の前?」 「うん、S駅の映画館の近く。梨美は1人だった」 少しずつ、過去の記憶が思い出されていく。 確かに映画館の前で、叩かれている人を見た。 その時自分が何をしたかは覚えていないけど、まさかあの子が麻伊だったなんて…。