灰色の瞳


花さんは大家さんだけど、このアパートから10分ほど歩いたところに住んでいるんだそう。

それならなかなか会うことはないんだろうなあ、なんて寂しく思いながら、荷物を着々と運んでいった。

最後の1つを運び、玄関先に溜まった荷物を避けながら、改めて部屋を見渡す。

うん、なかなか広いかも。

新しい方なのか、すごく綺麗だし、玄関入ってすぐ左側トイレ、右側がお風呂、正面が広い部屋で、多分ダイニングキッチンってやつ。

1人暮らしには十分すぎる1DKのお部屋。


花さんの配慮である程度の家具は置いてあって、ほんと、あとは住むだけって感じ。


ありがたいなあ、なんてしみじみ思う。


その後。

ダンボールを1つずつ開けては片づけを繰り返す。

食器は備え付けの食器棚。

服はクローゼット。

あぁ、たったダンボール5つでも、こんなにめんどくさい。