「あ〜そういえば、セラちゃんの隣の部屋にも1人暮らしの男の子がいるのよ、セラちゃんと同じ高校の。」
真っ直ぐ前を見て運転していた花さんが、急に話し出す。
「あ、そうなんですか!じゃあなんだか、安心ですね」
どんな子なんだろ、そう思いながら花さんに笑いかける。
しかし花さんはその男の子をあまりよく見かけないらしく、大家なのに住人のことがわからないなんておかしいわよね〜なんて笑っていた。
次第に話は逸れていき、母さんと父さんの急すぎる展開についての愚痴になっていった。
「ほんっと!佳奈はなんでも突然すぎるのよ!!どんだけ急いで部屋片付けたと思ってんだか!!」
母さんは花さんに、昨日連絡をしたらしく、花さんは昨日1日部屋のメンテナンス確認でハチャメチャだったらしい。
ほんと、母さんは‥
「申し訳ないです‥」
「やだ!セラちゃんは謝らないでいいのよ!?まあロイくんもギリギリまで言わないからねえ〜」
花さんは呆れたように笑っていて、母さんと父さんのこの突然さに慣れているんだろうと感じた。
もし、この時、彼の名前だけでも聞いていたのなら、私は違うアパートに移っていたのかも知れない。
私はこの日から、人生がまるっきり変わったんだ。
