~サツキ~

「……僕が、サツキの記憶を消したんだ」

一瞬、何を言われたのかわからなかった。

ラクがサツキの記憶を消す必要性がないし、何よりラクに記憶を消す能力なんてないはずだ。

人間相手なら、ラクでも簡単にできるけど、サツキは悪魔だよ?

力の差なんてほとんどないから、すきをついたって絶対無理。

サツキは驚きで固まった体を動かした。

「……き、記憶を消したって……ラクには、そんな力ないよね……?」

おそるおそる、言葉を紡ぐとラクは少し困った顔をした。

「ああ、ごめん。『消した』っていうより、『封じた』っていうほうがあってるかな」

「封じた?」

『封じた』という言葉に、さらに困惑した。

記憶を『封じる』という概念は悪魔にはないからだ。

なのにどうして、ラクは『封じた』と言ったのだろう。