~ラク~

悠希と理央が教室から出て行き、教室の中には沈黙が流れていた。

僕は静かに拳を握りしめた。

さっきの騒動で僕は、思い出したくもない記憶が脳裏をよぎった。

大好きな……大好きだったおじいちゃんがいた、赤く染まったあの村の光景。

僕の横で呆然とその光景を見ているサツキの手を強く握る。

その手は小刻みに震えていた。


ずっと心の奥底に隠していた何百年も昔の記憶。

嫌な記憶は、一生忘れないのだと実感した。


「……ラク」

僕の服の袖を引っ張る皐月。

皐月の顔には悲しみが浮かんでいた。


ああ、思い出してしまった。


「……ねぇ、ラク。あの赤い村は何?何なの……?」

僕は微笑を浮かべ、口を開いた。

「……帰ろっか」

その言葉で皐月は僕の言いたい言葉がわかったのだろう。

コクッと頷いて教室を出た。

「ごめん、みんな。先生よろしく……」

「うん」

倒れたままの先生を見ながら言い、僕も教室を出た。