キミの首輪に、赤い糸を。

そりゃそうだよな。

5年も会ってないわけだし、たった数日一緒に過ごした兄の顔なんか、覚えているわけない。


「俺はお前の...兄貴、だよ」


思い出したか?
嘘つきで、弱くて最低な、お前の兄貴を。

ほら、早く怒鳴って殴って、好きにしてくれ。
お前を見捨てた最低な俺を...。


「...すみません、僕、何も覚えてない...」


敬語とタメ口が混じったその言葉には、不安定さを感じた。

何も...?
何もってなんだよ。


「さっきから色んな人に聞かれるんだけど、僕は何も覚えてないの。あなたは僕の...お兄ちゃんなの?」


その言葉に、何も言えなくなる。

あとから医者に聞いてみれば、大きなショックを受けたことによる記憶喪失らしい。

それなら、知らないままでいい。
あんな過去、捨ててしまえばいい。

これからアイツは、幸せになるんだ。