トントン、とドアを恐る恐るノックする。


「え、っと...真白、です」


返事はない。
けれど、ドアは開いた。

無表情で、僕と目を合わせてくれない。

だけど、僕の背中を押してくれたお兄ちゃんの手は優しかった。

それからたくさん話しかけたけど、お兄ちゃんは何にも答えてくれなかった。

だけど、お兄ちゃんがいい人だってことは分かる。

ニコニコしてるお父さんより、お兄ちゃんの方が好き。

お話もしてくれないし、表情も変えてくれないけど、一緒にいて安心する。

こんな気持ち、今まで感じたことなかった。