デコくんとボコちゃん


オバケ屋敷も終盤に入ってきた頃。


──ガシッ


「ひいっぃぃいいいやああああ!?!?離してえぇええっえええ!!」


私はオバケに誘拐された。


腕をしっかり掴まれて離れない。


「琴李っ!?どこ行った?」


「ちいぃぃわああああ!!いやああぁぁああっ!!」


やだ、怖い怖い怖い!


必死に逃げようとするも力が足りず。


私は黒幕の外に連れて行かれた。


「ふ…ぇっ……誰かぁ…千和ぁ……」


私の顔はもう、涙でボロボロだった。


その時、頭にぬくもりを感じた。


なんと、オバケがナデナデしているのである。


「俺だよ、琴李」


小声で話すその声は…


「……伊吹くんっ…?」


私を誘拐したオバケの正体は、なんと伊吹くんでした。


フードを脱ぐと、薄闇の中ぼんやり顔が分かる。