「ええよぅ、そんな謝らんで!」
透き通った声色の彼女が、私の頭を撫でる。
聞きなれない、独特の方言。
顔を上げると、フワリと微笑むお姉さん。
天使かと思うほど、綺麗で…思わず見惚れてしまった。
「ウチ、高瀬栞(シオリ)。気軽に栞って呼んでな?
あなたの名前、聞いてもいい?」
「…あ、佐々木千和です」
「なら千和ちゃんや♪」
栞さんはココ、ココ!と石のベンチを叩いて、私を座らせた。
そうして花火を見上げながら、ポツリと話し出す。
「ウチらなぁ、両親おらんのよ。
別々に住んどって、年に何回かウチが伊吹んとこ遊びに行くの。
この祭りは、毎年ふたりで来るって約束しとってん。
アホよねぇ、寂しがり屋の姉のお願いよりも、大事なコトがあるやろうに」
私は同じように花火を見上げて、ただ静かに聞いていた。
