──これは、少し前に遡る。


花火を見るために、人混みの中で場所取りをする私と琴李。


「高瀬くん…?」


琴李は何かを見つけたようで、はじめは明るく…そしてだんだんと表情が曇っていった。


視線の先を見ると、そこには琴李が好きな高瀬くんと…綺麗な女の人。


仲良さそうに笑い合ってるふたりは、まるでカップル。


「…ごめん…私、帰る…!」


そう言って走りだした小さな背中を、私はどうすることもできずに唖然と見つめていた。


琴李、泣いてた。


私が動かなきゃダメだ。


我に返り、高瀬くんの方に歩み寄る。


そしてその腕をガシっと掴んで


「アンタ何やってんの!?
琴李…泣いて走ってっちゃったわよ?
琴李の気持ち弄んでたの…?ふざけないで!!」


一気に吐き出す。


彼は何が起きているのか分からない、という顔をしていた。


その顔を見てたらなんか悲しくなってきて。


「私の琴李悲しませたら許さないんだからねっ…!?」


涙が頬を伝う。


高瀬くんはやっと理解したのか、私の肩をポンと叩いて猛スピードで走りだした。


夜空に舞う、花火の中を。