「言っとくけど、あれ彼女じゃねーから」
「へ…?」
あまりに突然で、拍子抜けな声がもれる。
「あいつは…俺の姉。…唯一の家族だよ」
姉…家族……?
「ええっ!?お姉さん!?」
時間をかけて、ようやく理解した。
嘘でしょ?
私、あんなに泣いたのに…
「俺さ、母さん死んで、父さんどこにいるか分かんねえし…年に数回会える姉さんだけが、たったひとりの家族なんだ」
「えっ…」
お母さん、亡くなってたの?
だからあんなに、お母さんのこと嬉しそうに話してたの?
しかもお父さん…分からないってどういうこと?
いろんな感情が心の中でぐちゃぐちゃに混ざり合う。
「毎年この祭りは、姉さんとふたりで来るって約束してんだけど…高校生にもなって、ダセェよな」
「そんなことない!」
私は、まだ止まらぬ涙を拭い叫ぶ。
ようやく、目を合わせて。
「だって…たったひとりの家族でしょ?
そんなの、誰だって大切にするに決まってる。
高瀬くんはカッコイイよ?」
ちゃんと伝えたいから。
