「なに、あれ…」 千和も気づいたようで、驚いたような声をもらす。 「…ごめん」 「え?」 「ごめん…私、帰る…!」 人混みの波を、逆らって走る。 「ちょっ…琴李!」 ごめんね。 花火一緒に見れないや。 ごめんね、千和。 無我夢中で走る。 走る、走る、走る── 涙が頬を伝う。 痛い… 痛いよ… 走っている間も、ふたりの笑顔が頭から離れない。 それを思い出す度に、心がズキズキ痛む。