「あの曲…好きなんですか?」
「…ええ、好きです。とても」
「俊さんの歌、すごく感動しました」
「えっ…あ、ありがとうございます…」
急に口ごもってしまったので、どうしたものかと隣を見れば。
「……っ…!」
真っ赤な顔を大きな手で覆う彼がいた。
私は思わず顔を背けてしまった。
「すみません。嬉しくて」
はじめて見た、こんな表情。
そりゃあ…今日会ったばかりだし、なんにも知らないけど。
でも…
「…そう、ですか」
それが私に伝染するのに、そう時間はかからなかった。
どうしてそんな顔するの…?
「あの、千和さん」
「??」
名前を呼ばれて隣を見る。
その切れ長の目は、私をしっかり捉えていた。
「また会ってくれますか?…次はふたりで」
「へっ…!?」
つまりデートということだろうか。
「…私で良ければ」
「ありがとうございます」
約束を、してしまった。
“嬉しい”
それが素直な気持ち。
