デコくんとボコちゃん


──そして、放課後。


「よっ、月島」


「よ、よう!た、高瀬くん…!」


なんだか意識しちゃって、声が震える。


…もう、千和のせいだよ…。


チラッと千和を見ると、口パクで「がんばれ!」と言っているようだった。


「月島?どうした?」


「あ、な、なんでもない!
それじゃ行こっか、ドーナツ食べに!」


レッツゴー!なんてふざけながら、高瀬くんの隣を歩く。


…これ、傍から見れば絶対付き合ってるって勘違いされるよね。


ああもう!


どうにでもなれー!


なんてひとりで奮闘していると、不意に高瀬くんがこちらを見た。


「本当にごめんな。…その手」


そんなに気にしてるの…?


「いいっていいって、すぐ治るよ!」


「…でも、月島は女の子なのに」


「………え…?」


“女の子”という単語に、耳がピクリと反応する。


男子から、“女の子”なんて言われるの何年ぶりだろう?


「昔さ、母さんが言ってたんだ。
『嫁入り前の女の肌は傷つけるな』って」


「あはは、何それ?」


なんだか悲しそうで、懐かしんでるようで。


「母さんの名言」


「面白いね、高瀬くんのお母さん!」


「そうか?嬉しいよ」


どうして、こんなに嬉しそうにするんだろう。


まるでお母さんに褒められた子供みたい。