そんなしんみりした空間に、突然そいつは現れた。


「お父さんっ!?」


声を上げた彼女を、その場にいた客が不思議そうに見る。


姉さんだ。


会うのは夏以来になる。


「栞…なのかっ?」


「そうやぁ!お父さん…よう元気しとった?」


相変わらずの方言には、まだ慣れない。


「ああ、元気だよ。栞もこんな綺麗になって…」


また、涙ぐむ父さん。


「ダメやぁ…泣かんでよっ…ウチまで泣いてしまう…!」


言いながらも、すでにボロボロ涙をこぼしている姉さん。


それから姉さんも交えて、何年ぶりかの家族の話をした。


学校のこと、仕事のこと。


楽しかったこと、辛かったこと。


それから…


「そういえばなぁ、伊吹は彼女おるんよ!」


「…!!本当か?」


「ちょっ…なんで言うんだよ!」


てか、なんで知ってるんだ?


「そうかそうか…幸せにしてあげるんだぞ」


「おう、もちろん。今度…会わせてやるから」


いつか、絶対に。


自慢の彼女だと、紹介してあげよう。


カフェの隅での団らんは、それからしばらく続いた。


泣きはらした顔に、もう笑顔が絶えることはなかった。