「…父さん」
震えた声で名前を呼ぶと、父さんがゆっくり振り向いた。
ああ、父さんだ。
少し白髪が増えたけど、その鋭い瞳は、紛れもなく父さんのものだ。
「…伊吹……」
名前を呼ばれるのも、何年ぶりだろうか。
「久しぶり」
「ああ…久しぶりだなぁ…。大きくなって…」
涙ぐんだ父さんが、俺に近づいて腕を伸ばす。
…が、すぐにその腕を下ろしてしまう。
「いいよ、父さん。抱きしめてよ」
言うと、力強いその腕に、潰されそうなくらい強く抱きしめられる。
その力に負けないくらい、俺も強く…抱きしめ返す。
「ごめんなぁ…ごめんな、伊吹っ…」
「もう気にしてないって。それより…話してくれないか?俺が知らないこと、全部。」
ようやく俺を解放した父さんと向い合って座り、ちゃんと目を見て話す。
1秒もそらさずに。
