瞬間、俺の中の何かが、溶けていく気がした。
そうか。
この言葉を、聞きたかったんだ。
俺はずっと、父さんを恨んでいたけど。
…それは昔の話だ。
成長して、生活が安定して、友達もできて。
何も言わず出て行った父さんのことなんて、恨んでなかった。
ずっとずっと、話がしたかったんだ。
知りたかったんだ。
あの時、なんで出て行ったのか。
何か理由があるんじゃないかって。
「会えるといいね」
「…ああ」
ようやく答えが分かった、今日この日。
俺たちは、夕焼けが部屋を移動する中、しばらく抱きしめ合っていた。
