デコくんとボコちゃん


話が終わると、琴李は俺を静かに抱きしめた。


「…寂しかったね」


頭を、ゆっくりゆっくり撫でる。


小さな子どもあやすように、そっと。


「ちょ、おまっ…寂しくなんか…!」


「うっそだー、寂しいでしょ?」


いや…案外当たってるかもな。


ずっと琴李や他のみんなみたいな、明るい家族が羨ましかった。


家に帰れば誰かが待ってる。


そんな家族が、ずっと欲しかった。


すると琴李は、抱きしめながらこう言った。


「でもね、どんなにひどいお父さんでも…伊吹くんのお父さんは、ひとりしかいないよ。どんなに嫌いでも、お父さんは伊吹くんのこと、ちゃんと想ってるよ。
…もう、恨んでなんかないでしょう?」