すると…


『キース!キース!』


そんな掛け声が、ひとりの男子から始まり、瞬く間に会場全体へと広がる。


「…えぇっ!?」


そんな…ファーストキスが大勢の人の前なんて…


伊吹くんを見ると


「マジかよ…」


これは予想していなかったようで、珍しく顔を赤くしている。


どうしようかと見つめていると、バチッと目が合ってしまって、お互いに赤みが増す。


そんな間も『キース!キース!』という掛け声は止まず。


やがて意を決した伊吹くんの顔が、だんだん近づく。


ま、待って…まだ心の準備がっ…!!


──そして


「…本物は2人の時にね」


耳元でくすぐったく響く色っぽい声とともに、頬に何かが触れる。


“何か”っていうのは…もちろん彼の唇。


瞬間、ライブハウスのような歓声が湧き上がる。