このままじゃ、慶にまで被害が及ぶ。
被害者は、あたし1人で充分だ。
「だ、ダメっ!
こっちに来ちゃダメーー!!」
あたしは、車両に乗ろうとする慶の体を、力いっぱい突き飛ばした。
慶は弾き飛ばされ、その瞬間、扉が閉まり、電車は少しずつ発進し始めた。
良かった…。
慶が、乗らなくて…。
一時ホッと安心していると、背後からガタガタ…と音がして、思わず体がビクッとなった。
さっきの2体がまた目覚めそうだ…。
あたしは、一目散にその車両を抜け出し、隣の車両へ駆けた。
幸い、隣の車両は誰も乗ってなかった。
あたしは周りを気にしながら、シートの上に腰を下ろした。


