生乾きの髪が夜風に当たって少し寒い。
10月ももう終わり。
Tシャツに薄いニットのカーディガンだけではもう肌寒かった。
それに気付いたのか、緋色が指を絡ませ、自分の服のポケットに入れた。
「本当に大丈夫なの?」
「ん?こうしてること?今さら僕が女の子と歩いたって誰も気にしないよ。」
「そんなに沢山の女の子相手にして、いつか刺されるんじゃない?」
「大丈夫。みんな心優しきお姫様だから。」
「じゃあ、私が。」
「…いいよ?紅になら。」
黙って緋色の横顔を見つめると、視線に気付いたのかチラッと私の顔を見た。
「ん?どうかした?」
「なんか答え慣れてるね。いつも言われてるんでしょ?」
「ははっ、まぁね。earthの緋色ですから。」
「…earthじゃない緋色さんも見れるのかな。」
「うーん。紅になら会わせてあげてもいいよ?」
「え?」
「今度、うちにおいで。今夜のお返しにご馳走するよ。」
「な、なにを?緋色さんを?」
緋色は私の肩を引き寄せて笑った。
「紅は緊張感無くていいね。それと、もう緋色でいいよ。」
まだ、呼び捨てなんて出来ないし、緊張感無いのは緋色の方だ。
だってあの頃憧れた人だから。
