「だから、紅が一番だって言ったじゃん。」
びしょ濡れの緋色に引き寄せられて、3回目のキスをした。
「やっぱり、だめだ。ラパーチェの前に紅を食べたい。」
緋色はそのまま、大きなバスタオルに身を包み、私を抱えてベッドへ戻った。
「こんなに愛おしいのは紅が初めてかも。あまのじゃくでプライドが高いのに、傷付きやすい紅が一番大事。それだけは忘れないで。」
緋色の髪から水滴が頬に落ち、濡れた唇が首筋から肩をなぞる頃、私の指は緋色の髪を梳かし、足を絡めていた。
(もう無理。ウソでもいい。この人の言葉に騙されよう。)
抱きしめられる度に、あの香水がほのかに香る。
私でもこんなに人を思うことができたんだ。
彼の髪や吐息や汗全てを飲み込んでしまいたい程好きになっている。
どうしよう。
離したくない。
離れたくない。
見慣れた部屋の天井に緋色の息と、時折かかる少し長い髪を頬に感じ、彼と呼吸を合わせ、繋がった指先の心地よさに自然と声が漏れると、私はいつの間にか眠っていた。
浅い眠りから少し瞼を開けて、緋色の胸を抱きしめると、それに応えるかのように、緋色も瞼を開け少しだけ微笑んだ。
そして、
『グググゥーーー』
同時に鳴ったお腹の音に、二人は笑いが止まらなかった。
「紅じゃ、腹の足しにならなかったな。」
「何それ。人のことずぶ濡れにしたクセに。」
「身も心もすぶ濡れにして僕に溺れさせてあげるよ。」
「そんな風に耳元で囁いた人、私で何人目?」
「さぁ…忘れた。今は紅一人に何度でも囁くよ。」
「どうせ私はプライドの高いあまのじゃくですよ。」
「あはは。聞こえてた?」
緋色は私の体のラインをすっとなぞり、
「お姫様、ご一緒にシャワーでもいかがですか?」
と囁いた。
思わず赤面してしまう言葉も、緋色はサラッと言ってしまう。
突然恥ずかしくなった私は、手元にあったバスタオルに身を包み、
「け、結構です。シャワーは一人で浴びさせていただきますわ。」
と訳の分からない事を言ってしまった。
バスルームに向かう私の背中に、緋色が笑いながら、
「シャワー浴びたらラパーチェ行こう」
