心を、気持ちを落ち着かせる為に私は話題を変えた。
「デビューの話は進んでるの?」
「おお、うん。スゲーよ。年明け3月にデビューライブが武道館に決まった!で、12月に公開の映画のタイアップも決まったんだよ!それもearthの緋色さんが主演だぜ?」
「えっ?」
柊の口から思わぬ名前が出て驚いた。
それと同時に、心臓がドキドキと苦しくなった。
どうしよう。
どうしよう。
きちんと伝えなくちゃ。
「あ、そういえば京果ちゃんがさ…」
「柊、もうこおゆうの終わりにしよう。」
「え?」
柊は飲もうとしたビールジョッキの手を止めた。
「なんかさ。私、プライド高いから言えなかったけど、やっぱり他の女と居るの見たくないや。いつもかっこつけて、いい女のフリしてたけど、私も普通の女だったみたい。嫉妬もするし、束縛もしたい。だからもう今日で終了。」
言えた。
かっこつけずに、ちゃんと言えた。
「じゃあ、ここはデビュー祝いって事でご馳走するね。今までありがと。」
私は荷物と伝票を持ち、出口に向かった。
柊は動かず、一点を見つめていた。
