「ひぃちゃぁーん!」
甘い声で奥の席から出てきたのは、最近売れ出したアイドルの桃園 友衣奈だ。
 
ここラパーチェでも毎回違う男と良く見掛けていた。

「おっ!ももちゃん!久しぶりー!」

緋色は手を振りながら奥の席へ、友衣奈の元へ行ってしまった。




業界では遊び人でいい噂無いってゆうし、あのearthのボーカリストが一般人相手にするわけないし。所詮暇つぶしだよね。

「そう落ち込みなさんな。」

そう言いながら、強志さんはビールを出した。

「お、落ち込んでなんかないっ!」
「いつもさ、遊んで女慣れしてる緋色くんだけど、本当は凄い真面目で一途なんだよ。って言ったら信じる?」

「……信じられません。」
「………だよね。」

強志さんと見つめ合って、思わず吹き出してしまった。

「真面目で一途だったら、遊び人なんてそんな噂立たないですよ。」
「わからないよー?そういえば、紅ちゃんearthのライブ行った事あるの?」
「んー、相当昔に1度行った事あったかな?」
「年末にあるみたいだよ?行ってみたら?」
「そうですねぇ。タイミングが合えば…」

ライブなんか行ったら、もっと好きになってしまう。
広い会場で、何千人何万人に愛される彼を独り占めしたくなるに決まってる。

止められなくなって、醜く妬いてしまう自分になりたくはない。

今でさえ、こんなに苦しい気持ちになっているのに。

「何がタイミングなの?」

不意に緋色が顔を寄せた。

いやだ。顔が赤くなる。
こんなのかっこ悪い。

「緋色くんのライブ、紅ちゃん行かないのー?って話してたんだよ。」
「おお!そうだよ!おいでよ!年末だから詳しく決まったら教えるよ!」

「ありがとう。タイミングが合えば是非。」
「あれ?あんまり乗り気じゃない?もしかして妬いてくれてる?」
「そ、そんなんじゃないです。」
「大丈夫大丈夫、ももちゃんは子供みたいなもんだよー。」
「孫、の間違えじゃないの?」
「強志くん、それ言い過ぎ。」