どのくらい時間が経ったのだろう。
泣き過ぎで重たい瞼を無理に開けると、見た事のない天井がそこにあった。



「!?」



飛び起きて辺りを見回すと、少し開いている扉の向こうにグリーンのソファーが見えた。

音を立てずに隣の部屋に行くと、ソファーから足がはみ出て眠る緋色がいた。

(私だけベッド?自分はソファー?映画の観過ぎじゃない。無防備な女が泣いていたのに、手も出さないの?)


遊び人で、軽い人だと思っていた緋色。

手を出さなかったのは、私に魅力が無いから?
それとも、本当は紳士だったりするの?


どちらにしても、惹かれている事には間違い無い。


そんなところもずるい男だ。
セックスしてしまえば、遊びで忘れられたかもしれないのに。


ベッドルームから白いシーツを取って、緋色に掛けた。

そのまま、帰ろうとドアに向かうと

「落ち着いた?」

「あ…あの、昨日とゆうか、さっきはすみません。私、迷惑ばかり掛けて。ごめんなさい。」

「ふふっ、紅ちゃんは謝ってばっかり。もっと自分に自信持って。いー女だよ、キミは。」

「…ありがとう。…あの……。」

「言っておくけど、僕は泣いて眠るお姫様を無理やり襲うような狼じゃないから。」


緋色は穏やかな笑みを見せた後、伸びをしてベッドルームへ入って行った。





廊下に出てパタンとドアが閉まってから、バックの中の電話を取り出した。

数件の着信履歴と大量のメッセージが、未奈と柊から届いていた。

私は柊からのメッセージを読まずに消去した。
そして、未奈に電話をした。



「べーにぃー!あんた今どこー!?心配したんだからー!」
「ごめん、ごめん。ちょっと外泊。」
「えー?うっそ!てゆーか、聞いてー!私もさ、外泊しちゃったのよー!誰だと思うー??」
「さぁ、誰?」
「何と!凛さん!きゃーーー!とりあえず、戻って来なさいよ!」
「うん。あー、…詩織ちゃんは?」
「ああ、カバン見つかったみたいよ?お金と『ありがとうございました』ってメッセージがあった。一緒じゃなかったの?」
「うん、まぁ、色々あり過ぎた。とりあえず戻るね。」



私は自分部屋に戻り、あとわずかでチェックアウトの時間だと知り、慌てて荷造りをしながら未奈に、さっきまでの事を話した。