六十年後のラブレター


足もとを気にしていなかった優子は、置かれた鞄につまずいて転んだ。

「危ないけん、やめ!」

達也が叫んでも、優子は聞かなかった。

再び立ち上がって走り出すが、列車はホームを抜けていく。

「優ちゃん…好きじゃ…愛しとる!」

流した涙を拭うこともなく、達也は大声で叫んだ。

泣き声まじりのその声が、優子の胸に優しく響く。

優子はその場にしゃがみこんだ。

溢れ続ける涙に限りはない。