足もとを気にしていなかった優子は、置かれた鞄につまずいて転んだ。 「危ないけん、やめ!」 達也が叫んでも、優子は聞かなかった。 再び立ち上がって走り出すが、列車はホームを抜けていく。 「優ちゃん…好きじゃ…愛しとる!」 流した涙を拭うこともなく、達也は大声で叫んだ。 泣き声まじりのその声が、優子の胸に優しく響く。 優子はその場にしゃがみこんだ。 溢れ続ける涙に限りはない。