六十年後のラブレター


「たっちゃん!」

その瞬間外界との壁は崩れ、達也は笑顔で、だけどどこか悲しそうな顔をして列車へと乗り込んだ。

その悲しい後ろ姿を見つめながら、優子は静かに息を吐いた。

いつもより赤く染まった唇を開け吐き出す吐息は、白い風となって雪にとける。

厳しい寒さを感じながら、優子は堅く口をしめた。