六十年後のラブレター


「守りたい人が…おるからじゃ。」

達也の瞳が大きく輝く。

「死なせたくない人がおるから。俺は、大切な人を守るために戦うんじゃ。」

死なせたくない人がいる。

守りたい人がいる。

君は絶対死なせない。

達也の胸は、張り裂けそうになるほど苦しかった。

手を伸ばせば届く距離にいるのに、それができないもどかしさ。

「ギリギリになるまで言わんと?」

優子の声は、涙で震えていた。

達也は下を向いたまま顔をあげようとしない。

顔を見たら、抱き締めてしまう。

涙を見たら、生きたいと思ってしまう。

達也は優子の顔を見ようとはしなかった。

はれてしまった優子の目から溢れでる、大粒の涙。

なんで…

戦争に全部奪われていく。

父さんも、兄さんも、たっちゃんも、自由も…。

なんで…。

なんで―――…。