「守りたい人が…おるからじゃ。」
達也の瞳が大きく輝く。
「死なせたくない人がおるから。俺は、大切な人を守るために戦うんじゃ。」
死なせたくない人がいる。
守りたい人がいる。
君は絶対死なせない。
達也の胸は、張り裂けそうになるほど苦しかった。
手を伸ばせば届く距離にいるのに、それができないもどかしさ。
「ギリギリになるまで言わんと?」
優子の声は、涙で震えていた。
達也は下を向いたまま顔をあげようとしない。
顔を見たら、抱き締めてしまう。
涙を見たら、生きたいと思ってしまう。
達也は優子の顔を見ようとはしなかった。
はれてしまった優子の目から溢れでる、大粒の涙。
なんで…
戦争に全部奪われていく。
父さんも、兄さんも、たっちゃんも、自由も…。
なんで…。
なんで―――…。
