「今日じゃなかったと?たっちゃんの出征は。」
頭のなかが真っ白になり、言葉がうまく理解できない。
唖然とする優子を見て、母は手を止め気まずそうに聞いた。
「なにも…聞いてなかったと?」
優子は母を見つめる。
「一週間くらい前、召集がかかったみたいじゃったけど。ほら、ちょうど竹志さんとのお見合い話を聞いて、あんたが家を飛び出していった日じゃ。」
真っ白だった頭のなかが、ゆっくりと色彩を帯びていく。
一週間前…。
優子が達也に初めて想いを打ち明けた日。
あの日達也は―――…。
「母さん、汽車は何時にでるん?」
「もうそろそろじゃったよ。」
爆発したような大きな音をたててドアが開き、そして閉まった。
