六十年後のラブレター


「自分で責任がとれるようになったら立派な大人じゃ。成人してもいつまでも親に甘えとるやつもおれば、ほんまに小さいガキんちょでも筋の通ったことを言うやつもおる。大人と子供の間に境界線なんぞないんじゃ。お前も責任がある行動をしなさい。大人なんて、そんなもんじゃ。」

父の言葉は思春期の脆い心にスッと溶けこんできた。

その時優子は改めて父の背中の大きさを感じたのだった。

優子は達也に視線を戻した。

思い詰めたような表情でこちらを見ている。

まっすぐな瞳が優子を捕らえた。