六十年後のラブレター


暖かい日差しも暮れ、風が冷たく吹き抜ける。

重苦しい雰囲気を掻き消すかのように優子が口を開いた。

見合いの話がきたことを達也に話す。

達也は一瞬顔を歪め、視線を落とした。

「…そういうことぢゃぢたんか…。」

「嫌じゃ…行きたくない!」

「そりゃあいけん!向こうに悪い―――…。」

言い終わらないうちに、優子が口をはさんだ。

「たっちゃんはそれでいいと?」

「…。」

深い沈黙が二人を包む。

達也は顔を伏せたまま地面を見ている。

意地悪な質問をしたと分かっていた。

達也が答えに困るのも分かっていた。

しかし達也の口から祝福の言葉を聞きたくなかったのだ。