「はあ、はあ」

荒い息が耳につく。

優子は泣きながら神社まで走った。

あそこに行けば達也がいる。

嫌なこと全部、忘れられる。

そんな思いがあった。

神社の階段を駆け上がって鳥居をくぐり、横道にそれて森を抜ける。

大きな桜の木の下に達也はいた。

いつもと変わらない優しい笑顔で。

優子は泣きながら走ってきた勢いで達也に抱きついた。

「優――…。」

達也は驚いて優子の体を離そうと肩をつかんだが、かすれたような泣き声を聞き手を離した。