達也の父も死んでいった。

達也たち家族のもとへ残ったのは、変わり果てた父の遺骨と立派な最期だったという虚しい慰め。

しかしそんな言葉でも、達也たち家族が救われたのは事実だった。

威厳ある大きな背中はもうないけれど、父のたくましい生き方だけは達也の心に在り続ける。

召集がかかったら戦地に行くのは免れない。

それなら最期くらい、せめて笑顔で送ってやりたい。

それはもう戻ってこないという諦めではなく、心細くなったとき、思い出すのは家族の笑顔であってほしいという願い。

泣きじゃくる優子に、達也は優しく呟いた。

「大丈夫じゃ。」

自分で吐いた根拠のない言葉に憤りを感じながら、達也は優子の手を握った。