六十年後のラブレター


「優ちゃん、家帰っておばさんに謝り。」

息詰まる空間が二人の間に立ち込める。

「たっちゃん…たっちゃんまでそんなこと言うと?」

「それは違うで。」

「もうええ!」

「優――…!」

立ち上がり、走り去ろうとする優子に達也が叫んだ。

「優ちゃんは逃げとるだけじゃ!大事に育ててきた息子を戦地に送り出さんといけんおばさんの気持ちも考えてみぃ!兄さんだって本当は行きとぉないはずじゃ!それでも行かんと非国民じゃ言うて連れて行かれて、家族は周りからいじめられる…優ちゃんだってわかっとろぉ?」

「…っ。」

「そんなおばさんや兄さんのために出来ることは、笑顔で行ってらっしゃい言うて送り出すことじゃないんか!?」

達也の一言一言が、幼い優子の胸に突き刺さる。

溢れ出す涙。

達也には優子の気持ちが痛いほど分かった。