六十年後のラブレター


木々が揺れ、雲が流れる。

愛しい姿を見つけ、優子は達也に抱きついた。

「ゆっ、優ちゃん!?」

頬を真っ赤にして戸惑いながらも、達也は震えている肩にそっと手をやり目を細めた。

どれほどの時間がたったのだろう。

優子は達也に全てを話した。

「たっちゃん…うちは間違っとるんかな。ただ家族で毎日笑っておれたらそれでええのに…。何も…望まんのに…。」

「…。」

「兄さんが…帰って来んような気がするんよ。」

優子は壊れたような笑顔を見せた。

「もう、会えんような気がするんよ…。」

「優ちゃん…。」

「嫌じゃ…うちの…たった一人のお兄ちゃんなんよ!…っわぁあああああぁぁっ!」

壊れていく優子を横に、達也は大きく息を吸って口を開いた。