セミが鳴いている。
生暖かい風が教室の中に音もたてずに入り込む。
汗でベタベタした肌にシャツが張り付いているのも気にせず、あたしはいつも通り授業を受けながら必死にノートをとっていた。
「じゃあ、今日はここまでね。宿題は教科書の38ページの大問3まで」
えーまじかよ、多いよー、とみんなが騒ぐとタイミングよくチャイムがなった。
「きりーつ。礼!」
学級委員長の号令にあわせて頭を下げる。
「あーー、疲れた!」
先生が教室から出るなり広樹が隣で大きく伸びをした。
「広樹、邪魔だってば」
といって広樹の後ろに座っているこうちゃんが笑いながら広樹の頭をたたく。
「ほんと、広樹って子供よね」
「無理して大人ぶってる英里にいわれたくありましぇーん」
「なっ…」
ベーっと舌をだして挑発する広樹にまんまとのってる英里。