「…まず、軽く数学から…まず正と負の数、シルン、-3+4×(5-9)は」
ヒカリは頭の中で計算してみた。
えっと、5-9=-4で+4×(-4)が…
「-19」
よどみなくシルンが答えた。
軽くうなずいてさらにワドが続ける。
「次は方程式だ、シルン、3+3x=6+9のとき、xの値は。求め方の手順から説明してくれ」
「始めに左辺にx、右辺に数字を並べて…」
「こうなるな」
スクリーンにすぐさま式が映し出され、シルンの指示通りに動いた。
「次にそれぞれを計算します。そうすると左辺が3x、右辺が12になります」
3x=12、とスクリーンに式が映し出される。
どこから映してるんだろう、とヒカリは思ったが、考えるのはやめにした。
「両辺を3で割って、x=4です」
「正解。基本は抑えたな、次は二乗の計算だ。2の二乗、4の二乗、10の二乗は。それぞれ答えてくれ」
まだ解答権はシルンにあったらしい、シルンがせっせと説明する。
「順番に4、16、100です」
「そうだ」
ワドは次に表を映し出した。
表には
x 1 2 3 ウ
y ア 6 イ 24
と書かれている。
「シルン、xとyが比例の関係であるとき比例定数aは」
「3」
「それぞれの記号に当てはまる数字を言ってくれ」
「ア3、イ9、ウ8」
「正解だ」
ここでワドは一息ついた。
「分からないところは、ヒカリ」
「え、えぇっと…まだ、ないです」
「分かった。じゃあ反比例は飛ばす。いいか」
「あ、はい」
そうか、どうやらヒカリに合わせてくれていたらしい。
ほっとヒカリは息をついた。
あまり勉強は好きじゃない。
苦手だし。
そして、やっぱりヒカリは次の単元でわけがわからなくなった。
解答権はウィングに移っていた。
「線分ABの長さが8cm、同じ直線上にある線分BCも同じ長さのとき、線分ACの長さは」
「16cm」
ここは習った、その次の垂直と平行も…
「三角形ABCを直線Lを対称の軸にして対称移動させた三角形PQRについて答えよ。角BACが90度のとき、角QPRの角は」
「90度」
「ついでにだが、同じ三角形、角ABCをaとしたときaの変域を答えろ」
「0<a<90」
「正解だ」
ここもなんとか。
「ウィング、半径6cm、中心角120度の扇形の弧の長さは」
「4Πcm」
「面積は」
「12Π㎠」
「一辺5cmの正方形を直線Lを中心に一周させたときにできる図形は」
「円柱」
「高さは」
「5cm」
「底面の面積は」
「25Π㎠」
「この円柱の体積は」
「125Π㎤」
全く分からない。
「よくできました」
「ワド、こんなん余裕だって。俺のことなめてんの?」
「悪かった。お詫びに何か俺に挑戦してみるか」
「おっけ、じゃあとっておきの証明問題な!!」
そういってウィングの出した問題をワドはすらすらと指揮棒片手に説明しながら解いていったがシルンは全く聞いていない。
もちろんヒカリにも理解できないので、ヒカリも聞いていない。
聞いているのはウィング、テル、キング、キース、ゼロだけだ。
それもわかっているのかワドは注意しない。
「難しいね、やっぱり」
少しだけ耳を傾けていたらしいシルンがうぐーとつぶれた。
「微分と積分の違いってなに?知ってる?」
「え、ううん。っていうか、みんな頭いいんですね」
「そりゃそうだよ、キースとキングはあれでも医者だし、ゼロは魔界最高峰の頭脳派だし。ウィングは…昔教授に拾われたとかで一応理数系にだけは精通してるっていうか…」
「というか、テルさんが」
「ああ、私も謎なの。テルだけは、何でかわかんないんだよねぇ…」
「ふうん…」
「二人とも。待たせたな、ヒカリはどうやら空間図形のあたりが苦手らしい。俺がたたき直してやるから覚悟しろ…おい、お前もだからなシルン、球の表面積と体積の求め方、徹底的にやってやる」
あわわとシルンが慌てている。
そんな、あそこだけは勘弁してとワドを拝むが、ワドはだめだ、と一喝。
「苦手なところだけやらなくてどうする。ああそうだ、ちゃんとやったら俺が後でご褒美やるよ」
どうしてだろう、なぜかこの人が言うと危ない言葉に聞こえてくる…
「ご褒美って?」
「何が出てくるかわからないプレゼントだ」
「やだ、いらない!」
「表面積が10Πcmの球にはお前のほしいものが入ってるぞ。何が入っているかはお楽しみだ」
「う…いじわる!!」
「選択肢を10個から30個に増やしてほしいんだな、よし分かった後で手配してやる」
「わぁぁぁぁ、やめてったら!!」
シルンは慌ててワドの出した課題(ノートの中)に取り組み始める。
ヒカリもそれに倣ってはじめて、分からないところはワドが教えてくれた。
「あの…25×5って…」
「自分で計算しろ」
…結構厳しかったけど。
分かりやすかったし、公式も覚えられた。
うん…シルンちゃんは難しかったみたいだけど…
「きゃぁぁぁぁ!!!」
「それは100Πじゃなかったか。半径を勝手に十倍しただろう」
「だって、だって…」
「ほらほら泣くな泣くな、一緒に考えればすぐにわかる…」
ワドが好きって本当らしい、覗き込むワドの額がほとんどシルンに触れかけていて、シルンはポッと赤くなっていた。
何がともあれ、数学の時間は終わった。
後で聞いてみると、ウィングたちはフェルマーの最終定理について議論を戦わせていたらしい。
さっぱり分からないんだけど…うん、地球の人だから、いつか私も勉強するかもしれない。
たいへんだ…
「次は何やるの?」
「…魔法科はどうだ」
「やったぁ、私大好きなの!!」
「の割にはできないよなぁ」
「ひどい!!」
またウィングとシルンが言い合いを始めた。
「あはは、愉快な仲間たちがねぃ」
テルが不意にヒカリにそういった。
「お前も、そう思わねぇか?」


