「あれ、どしたの、ワド。あいつ吊し上げてくるんじゃなかったのかよ?」

「…いや。あいつも、俺の主人だ」

「あはは、俺もあいつと同レベル?」

「違う、ご主人様だ」

「あは、おもしれー」

「…」

「なんで出てきたよ?」

「…場の空気を察した」

「そつのないやつめ」

「…だが、何が起きたか知りたいというのならリクエストには応えられる」

「なんで?」

「…キースには内緒だ」

ワドはあの茶色の瞳に瓜二つの義眼をとりだした。

「お前な、犯罪だぞ…あいつ医者だからやっただろ」

「そんな下心は全くない。俺は生物として心配になるほど異性に興味がない」

「…自分で言うか」

「お前が見たいというと思って…」

「うん、サンキュ。できればお前が触診受けるときは言って。俺がする」

「…何度言えばわかるのか知らないが、俺はくすぐったいという感覚と笑いがどうしても結びつかない。苦しいだけだ」

「いいじゃん!!限界を超えろ!!」

「…お前がしたいなら拒否はしない」

「嫌がれよ!このご主人様至上主義!!」

「…嫌なのか」

「だまれぇぇぇ!!」

「まあ、できれば全員に仕込みたいところなんだがな…」

「うわぁ」

「義眼…どうだ」

「やだよ。大体なんでつけてぇの?」

「防犯だ」

「あ、そう。防犯カメラね」

「…ああ」

「さっきから返事が遅れてるのは何で?」

「…」

「おーい?」

「映像はリアルタイムだ」

ワドはそういって去って行く。

あとに残されたテルは肩をすくめて微笑んだ。

「ほんと、過保護なやつ」