病室に、クラウドの悲鳴が響いた。
ウィングはハッとして、弟のいた場所へ戻る。
気を失ったはずのクラウドは目を覚まし、恐怖に瞳が見開かれていた。
「あ、助け、て、お兄、ちゃ…」
あの“悪魔さん”がクラウドの首筋に吸い付いていた。
見る見る小さな体から血の気が引いていく。
ウィングはただ見ていることしかできなかった。
「あ、あ、あ…」
がっくりと動かなくなったクラウドに、ウィングは何も感じることができなかった。
それよりも、自分のことで、頭がいっぱいで。
どうやって助かるか、それしか考えていなかった。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
大声を上げてウィングは空いていた窓から決死の勢いで飛び出す。
一瞬体が傾いて、何とか体制を立て直し、村の方へ必死で飛んでいく。
こんなスピード、出したこともない。
制御しきれるかどうかすら、分からないのだ。
ただただ泣きながら、めちゃくちゃに飛び回った。
まるでそれは、網に囚われた魚のようで、ただ必死なのに、何の意味もない。
悪いことは続けて起きると、いったいどこの誰が言ってたんだろう。
家には母親も父親もいなかった。
でもそれは、若干の齟齬がある。
母親と父親がいるはずの家が“あるはずの”場所には、ただ空白が広がっているだけだった。
家が、ない。
生まれてからずっといた場所が。
居場所が…
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
力の限り叫んだけれど、燃え盛る“滅びかけの小さな村”には応えてくれる者はいない。
「吸血鬼を見つけろ!!」
「村ごと焼き払え!!」
そんな無情な声が、悪魔の声が、ウィングに答えを教えてくれただけだった。


