「待って」
「?」
ウィングはその声が信じられなくって、わずかに顔を上げた。
「連れていかないで」
テルは静かに先を促す。
「連れていくなら、僕も一緒だから」
キースは片目を失った顔で、それでも強くテルに言う。
「…あのな、その眼、誰にやられたか覚えてるんやろな、キース」
声が震えて、ウィングは軽くせき込む。
それにはだいぶ血が混じっていた。
テルは思ったより優しくウィングを放した。
何とか上体だけは起き上がると、ウィングは俯いたまま吐き捨てる。
「分かっとんなら、なおさら馬鹿や」
別に顔を合わせたくないとかじゃない。
ただ単に、もうそんな体力、残っていない。
「テルはんもゆうっとったやないか。お前は俺の飾りやったんや。俺はお前のことどうともおもっとらへん。ほんま、どうでもよかったんや」
止まらない。
言い出すといくらでもいえる。
「お前は足、不自由やったやろ?はたから見れば邪魔なお前を連れて歩くのは、俺のポイントがあがんねん。障害さえあれば誰でもよかったんや。はたから見て俺の印象が良くなれば、誰でもよかったんだよ!!」
最低のことを言っていることは自分でもわかっていた。
それでもいい。
どうせ、俺には失うものなんて、もう何も残ってはいない。
もともと、キースと自分しかなかったんだから。
「お前はまんまと騙されて俺についてきてたわけ。連れてきても何の不自由もなかったし、こっちからしてみれば何もかも得だったってだけ!!お前にとっての俺が何だったのか知んないけどさキース、俺とお前の関係はそんなもんだったんだよ!」
そう、それだけの関係だった。
キースが付いてくる理由なんてない。
それは当然で、当たり前だったけど、キースがずっと味方なんて、信じてた自分が馬鹿だ。
そんな自分が嫌だった。
所詮人なんて、こんなものなのに。


