ブーン、と鈍い音がして、通信が途切れる。
キングはため息を吐きながらカラオケルームを出て行った。
部屋の中にはいまだに騒いでいる船長とシルン、加わったウィング、なだめるキース、巻き込まれたゼロ。
その輪に加わりたいくせに仲裁すらできない、いや“許さない”ワドは操船室でパニックを起こして倒れそうらしい。
あんな鋭利なものだらけのところで倒れたら縫合くらいは覚悟しておかなければならない。
頼むからうつ伏せにならないでくれよ、とキングはあきれつつ呟いた。
本当に人が二人立つのが限界と言わんばかりの狭さの操船室。
二階の部分にうつろな瞳のまま操船をしているワドがいる。
意識はあるのかないのか微妙なところだが、ワドは気絶より操船の方に全力を注いでいるらしい。
意識がないのにそうやって体を動かしているのは何度か見たことがある。
主に疲労が限界を超えた時だ。
指先の指示には認識を犠牲にして得たブドウ糖が物凄い勢いで消費されているのだろう。
何も食べないくせ、こういうふうに体を酷使するのだから泣けてくる。
キングは頭を押さえながら、憑りつかれたようになっているワドをコントローラーから引きはがし、点滴を打って寝かせる。
おとなしく横になったワドをしり目にキングもまた、鮮やかにオールを動かした。
__DOOLだろ?噂には聞いてる。
__そうだよ、その問題児が今うちにいる。
__いかれてるだけなんじゃないのかよ?
__…そうかもしれないけど、そうとも思えない。
__思いたくないんじゃなくて、か?
__うるさい。いいから来いって…!
__わかってるよ。イカレたおニンギョウの世話係だろ、引き受ける。
__はいはい。
予想よりずいぶんなお人形っぷりだ、そう毒ついてちら、とワドを見る。
始終怯えて何が楽しいんだか。
だがだんだんと、ワドは“保護対象”から“仲間”に移り変わりつつある。
寝顔だけはあどけなくって、キングは弟でも見ているかのような錯覚に陥った。
「…弟…」
キングは一瞬、ワドがおにいちゃん、と自分を呼び慕っているところを想像して、そこに表情がないことに閉口した。
「…笑わないな…こればっかりは…」
ふうう、と大きくため息をついて、誰に言うでもなくキングは、こんな聡い弟怖くて持ってられない、とつぶやいた。


