「敵の射撃により帆が裂かれた。無理やり近くの星に緊急着陸する」
ずいぶんと乱暴なセリフの後、急に進路が切り替わったようで室内に真っ赤なランプが点灯する。
「あれ?帆が裂かれたのに進めるの?」
船は主に星と星の引力によって進んでいる。
微弱な引力を感じ取れる帆を裂かれたのなら、この船は身動きできないはずだ。
そう思ったキースは不思議そうに小首をかしげる。
「燃料を酸素とを融合させて爆発を起こして進むの。ロケットみたいなもの」
「その代わりあんま船に優しくないけどな」
カラカラ笑いながらテルがシルンの解説を補足する。
噴気孔のようなところから出る煙の量は尋常ではなく、大量の酸素も必要なのであまり移動の手段には使えない。
さらに船に大きな負担がかかる。
進めてもせいぜい3光年かそこらで、船は粉々に大破する。
「まぁ星が見えてるんなら問題ないけど」
「帆のかえってまだあった?」
「実写版織姫が作っってたよ」
「ワドは男だけど」
「女かもしれないだろ?」
以外に見た目によらないもんだぜ、と茶化したテルはシルンの背中を思いっきり叩く。
うっ、と呻いて一瞬目の前が暗くなりシルンはテルを殴った。
「ふざけないでよ馬鹿船長!!!痛いじゃない!!」
「悪い悪いって!おい!ごめんったら!!何で水晶なんか持ってんだよ!?馬鹿!短剣振り回すなっ!!」
狭いカラオケルームの中を走り回り斬りつけるシルン。
キングは微笑ましくそれを見ていた。
「…いっつもこんな感じなんか?」
「そうだなぁ、結構こんな感じだな」
「…」
ほのぼのしてる場合とちゃうやろ、とウィングがキングをパシン、と軽くはたく。
いってぇな、と微笑みながらキングがウィングを小突いた。
ワドがそのとき軽いパニックに陥っていたことなど、誰も知らないのだ…
「…」
必要以上に機器をいじくりまわしぶつぶつ声にならない声で呻くワドは正直言って気味が悪い。
着陸、そればかり考え、文字通りほとんど無我夢中。
ああ、この前ご主人様が言っていた映画のタイトル、なんだっけ。
リンゴっていう字、どういう由来だったかな。
この船の蔵書はどのくらいだった。
三角定規を使わずに平行を作る方法って何だったか。
イチゴとミカンとどっちが甘いんだっけ。
ミクロとマクロってどっちがどっちだ…
少し考えればわかってしまう問題に頭を悩ませながらワドは赤の反対色について考えていた。
だんだんオーバーワークに脳の働きがぶちっと行きそうになったが、踏みとどまって今度はメビウスの輪について考え始める。
「…」
あれ、俺は何をしているんだ?
遠くに自分を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、混沌とした意識の中にのみこまれていった。


