「楽しかった?歌うの」
「…音楽は好きだ。だが楽器の方が性にあっている」
「いいじゃんか。エンゼルボイス、ってね?」
「…少し意味合いが違う気がするぞ」
「いいの」
ねぇ、と甘えてテルはワドを見る。
「何だ」
「全員、ルームに入っちゃてるよね?」
「そうだな。俺とお前以外は」
「じゃあ、甘えて良い?」
「…?」
珍しいクエスチョンマークはすぐにエクスクラメーションマークに代わる。
風にたなびく金色の髪がさらさらと流れ落ちた。
「おい、見られたらどう…」
「なんか、心細くなった」
「…」
えへへ、と笑って、楽しそうに微笑む。
「私、やっぱワドのこと大好きなんだな~って!」
シルンのものにならないでよ、と牽制も込めてウィンクすると、ワドは小首をかしげて何を言う、といつも通り。
「言われなくても俺はお前の物だ」
「ちょっとー?漢字が違うよ、なんで物品なの」
「…いいだろう。安心しろと言っている」
「大好きだからね、ワド」
「…いいから戻れ」
ほぼ同じ身長の美少女。
ガサツで子供っぽいテルからは想像もつかないほど清潔な香りを漂わせて、くすっと微笑んだ。
「名前、呼んでよ」
「ずいぶんと冒険家になったもんだな」
「いいでしょ?私の勝手」
ガキか、と吐き捨てるようにため息をついたワドは、できるだけ声が聞こえないように、引き寄せて囁く。
「クラウン」
言ったぞ、戻れ。
素直に男の姿に戻ったテルは不満げに唇をとがらせた。
「戻れ、っていうなよ」
変装しろって、言って欲しい。
「ずいぶんと認識が変わったな。この姿が本性だ、なんてほざいてたガキが」
「あれえ、ずいぶん口が悪いじゃん」
「嫌ならやめるが」
「ううん、すげー好き」
「…お前…なじられるの好きなのか…」
「ちょっと待って、複雑そうな顔するとこでしょ!?突っ込みたいから表情ナシはやめてぇ!!」
「…どんな顔だ」
「もういい!!ポテト揚げてっ!!」
「了解しました」
「むぅ」
二人のやり取りは、確かにみられてはいない。
聞かれても、いなかった。
ただふわりはぴょんぴょこ跳ねまわって、足元にじゃれ付ていたけれど。


