「何気なく無視されてるんやけど、キングってどうなんや?」
「ああ、あいつは非戦闘員。下手に戦われてケガしたやつを回収すんの」
「なんやぁ、それ」
「色々治療とかできるからさ、ほら、やっぱ医者だし!?」
「…」
ウィングはなんだか納得いかなさそうな顔をしているが、テルは構わず押し切った。
「いいじゃん、あいつ喧嘩ごと好きじゃないし!」
「喧嘩ごとは好きだが操船がある程度できるのがキングと俺とテルだ。全滅を避けて逃げ出すためのようは保険だ」
「あ、ワド!ちょうどいいとこに!!」
これ幸いとばかりにテルは瞳を輝かせてワドに抱き着く。
しかし突っ張り棒の要領で突き出された腕に阻まれうまくいかなかった。
しかしこんなことでへこたれるテルではない。
「カラオケセットある!?」
「あるにはあるが、動くかどうか知らないぞ。最近使っていないだろう。どういう風の吹き回しだ」
「季節外れのモンスーンが吹いてきてさ、うまく乗せられて西へ東へとばされたんだよ」
にやっと笑ったテルはそういうとそれにさ、と悪戯な笑顔で言う。
「久しぶりにワドの歌声聞きたくって…やだ?」
「…」
上目づかいに見るもひんやりパワーで瞬殺された。
「分かった。レクリエーションルームに出しておく」
「お前も、な?」
「…分かった」
なんとなく歌わないイメージが強いワドが熱唱している姿を想像してウィングはぷっと噴出した…
が。
「…」
マイクを握る、というか持っているその距離は常に唇から三センチ前後を保っていた。
「ひゅー!!さっすがぁぁぁ!!」
「…」
ドライにもほどがあるその表情はやたら飾り立てられた100.0の表示をみても揺らぐことはなかった。
「…」
はい、と言わんばかりにマイクを差し出してきてウィングがそれを戸惑いがちに受け取るとワドは立ち上がる。
「何か軽食を持ってくる」
「いいよ、お前は歌ってて。俺が持ってくるからさ」
「いい、お前がやりたかったんだろう」
「黙って俺に任せとけっての!!こういう時高級フレンチ持ってこられても困るし」
「持ってくるか。大丈夫だから」
普段見られないほどの強情さで食い下がるワド。
ここまで来るとさすがに不自然なほどだ。
「じゃあ一緒に行こう」
それは譲歩したようであって最初から仕組んでいたような半ば命令のセリフ。
逆らうのをためらったワドは問答無用とばかりに引きずり出された。
「…」
「強引やなぁあいつも」
声をかけたキングとシルン、キースはあはは、と笑っていた。
ちなみにゼロは笑っていない。
「ねぇ、次、誰が歌うの?」
しぃん、と静まり返ったのは無理もない。
あれだけ完璧な歌の後で、誰が醜態をさらすんだ。
そんな会話が、無言のうちにそれぞれの心の中で交わされた。


