「おい」
肩を掴まれて、無理矢理振り向かされてしまった私は、びっくりするほど整った顔の餌食になった。
「ここにいたのか」
私は顔を背けて駆け出して、それを止められてしまった。
抵抗するけど、所詮私は女。
怪力に敵う訳がないので噴水近くのベンチまで連れてこられてしまった。
「その花、似合ってる」
その髪飾りは途中小さな女の子にもらったもので、私はありがとうとそっけなく返す。
「今日貰ったの」
「そうなのか。よかったな」
ここで待ってろと勝手にベンチを立たれてしまった私は、逃げることもできたけど大人しくしていた。
「ほら、スープ」
しばらくたって帰ってきたその両手にはコップが握られていて。
湯気のたつその内1つを私に差し出した。
「本当はこっちはもらってくるはずじゃなかったんだが」
中身はどうやらコーヒーのようだった。
「男が一人でこんな夜に公園にいないだろうといわれた」
俺も開き直ったけどな、と諦めたようにそう呟く。
「飛びっきり可愛い彼女とデートだって言ってやった」
私はスープにむせ、コホコホ咳をする。
「何か間違ってたか」
「で、デートじゃな」
「へえ、恋人であることは否定しないと」
「あ、ちが」
「男女が夜出かけてたらデートだろ。友達でもな」
無表情のままブラックのコーヒーを飲んで、嫌か、と聞いてくるそのふてぶてしさ。
私はむくれて、嬉しい、と叫んでやった。
「今日どこで寝る気だ。野宿か」
「そのつもり」
「ずいぶんおてんばだな。やめとけ、もう秋は冷えるぞ」
「いいでしょ、別に」
「よくない、俺の別荘に泊まれ」
「嫌。だってみんないるでょ…」
「小さい方でいいなら誰もいない。そこで寝ろ」
野宿よりはマシだろうと言われて、私は仕方なく頷いた。
「だいたい、女の子が夜に一人でほっつきあるくなんてどういう事だ。児童虐待の通報が入るところだった」
「…子供じゃないもん…」
「その台詞がすでに子供だ。人は良くても熊が襲ってきたらどうするつもりだったんだ」
「こんな町中で…」
「お前は野宿に山を選ぶと踏んだ。山には動物が出る。蛇に獲物だと勘違いされたらどうする」
「…」
お説教タイムが始まって、私はギュッと耳を塞いでやった。
「こら」
耳から離された手は強制的に1つにまとめられて拘束される。
しっかり押さえつけられてそれから小一時間ほどお説教されてしまった。
私は子供じゃないのに…
「いくぞ」
やっとそういって解放された両手は暖かくなっていた。
ばさ、と不意にかけられた上着にドキッとして振り向けば、着てろと一言。
「こんな季節にサンダルで野宿とはいい度胸だ」
「…もう怒らないで…」
それにおっきいし変と文句を言うと、無理矢理右手を引かれる。
手際よく指がからめられて、気がついたときには恋人繋ぎになっていた。
「これなら違和感ないだろう」
確かに、彼氏のコートを着てるのは分かる。
私は真っ赤な顔を隠して、手をふりほどこうとしたけど、しっかりとらえられた手は決して振り払えず。
「…ひど」
「無茶しようとしたお仕置きだ」
良く効くだろう、と感情すらこもりもしない無表情のままいい放たれて。
私はさらに顔を赤らめてうつむいて。
簡単に暖かくなっていた別荘に連れていかれた。
「あの…」
「なんだ」
「もうどこかに…」
「逃げないとは言い切れないからな」
そして逃げないようにと過保護すぎる理由で眠るまで監視されてしまったのでした。


