「シーザ、いるか。連れてきたぞ」
呼びかけると、人の良さそうなおばさんが現れた。
「まあ、わざわざ来て下さったんです!?」
「ああ…たまたま此処に来ていてな。この子はヒカリだ」
「私はシーザ。よろしくね、ヒカリちゃん。嬉しいわ、うちには女の子がいなかったんですもの」
「ナサとダレンは何処にいる。さっき表でサシャは見かけたんだが」
「あの二人ならもうすぐ帰ってきます。だいぶ前、ドライフルーツをいただきに行きましたから」
相変わらず無表情のワドとは対照的に、シーザと呼ばれた人は嬉しそうだった。
「じゃあ、帰りがけ二人に挨拶でもしてくるから…ヒカリをよろしく、シーザ。可愛がってやってくれ。此処のこともあまり知らなくてな」
じゃあな、元気にしてろよとヒカリにも一度手を振るとワドは店を出ていって、いつの間にか表の雑踏に消えてしまった。
「さあ、ヒカリちゃん。まずは部屋に案内するから、ついてきてね」
「あの…ワドさん…えと、さっきの人はどこに…?」
シーザはクスッと笑って子首をかしげた。
「あの方はどこにでもいるわ。でもね…」
どこにもいないの。
ずっと謎めいていたワドだけど。
結局ヒカリは、それからワドどころか、あの船の仲間とは会うことなく。
最後の最後まで、全ては謎だった。
「ありがとうございました、みんな」
別れを告げられなかったのは悲しいけど、きっとそれも彼らの優しさだと信じて。
ヒカリは自分の部屋に案内されるため、シーザのあとを追った。


